家族の歴史を受けつぐ庭 ~施工事例

久しぶりの投稿です。
変わらずこつこつ庭仕事しておりますが
つい筆無精でレポートが遅くなりました。
今回は四年前に完成したお庭の工事~完成からその後をご紹介します。


都内某所で建て替えにともなうお庭・外構工事のご相談。
依頼主は私の中学時代の部活の同級生。
当時、部活仲間で時々遊びに行っていた懐かしい場所。
亡きお父さまが建てた家には思い入れがありながらも50年近く経ち、
お母さまが住むのに不便が多くなってしまったので建て替えすることに。

建物の建築設計を担当したのは、つばめ舎建築設計の根岸さん。
シェアハウスやシェアスペースの企画設計に意欲的に取り組む方で、
私と依頼主と3者での初打合せは新居をシェアハウスにしではどうかと盛り上がり、
計画がスタートしました。
後日、根岸さんから出てきた計画は、
1階が依頼主家族のため居住スペース、
2階は3名が入居できる賃貸のシェアハウス。
1階のお母さんの気配が、2階の住人の方たちにも感じられるオープンで素敵な計画でした。

私の担当である外まわりを計画する上で大切にしたかったのは、
依頼主ご家族が長年見慣れた何かを引き継いで残すこと。
そして、前の家の建築時にお父さまが記念樹として植えたゴヨウマツを残し、
家をとり囲んでいた塀の大谷石を敷石として再利用することになりました。

建物の解体前に、45年近く玄関前に植わっていたゴヨウマツを掘り上げて
別の畑に移動させ、外壁の大谷石も解体して、新たな建物が建つまで別々の場所で待機させました。

青いガルバリウム張りの建物が完成すると、ゴヨウマツを植え戻し、大谷石を床に敷き込みました。
かなり重量のある大谷石を敷くのは大変な作業ですが、年月を経た石の風合いは
年季の入ったゴヨウマツとの相性もよく、代えがたいもの。
道路際のスペースも余さず植栽しました。







大谷石を敷いた場所は臨時駐車場なので、
ふだんは緑を楽しめるようディコンドラの
種をまいて床を緑で埋めました。
その脇に植えたアガパンサスが、
青い壁に映えてよく咲いてくれます。


道路際の植栽も元気に茂ってきました。


フレームだけの窓がしつらえてあり、
壁と扉で外部とほどよく隔たれている中庭は、縁側があってご近所さんが
ちょっと寄っていきたくなる場所。
角にツリバナの木を植えて、リビングからも季節を感じられるように。

壁を建てて中に向かって閉じるのでなく、
外に向かってゆるやかに開かれた空間。
設計が住む人の暮らしに影響をもたらすことを改めて学ぶ貴重な機会になりました。